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【読売新聞:広告掲載▷舞台フラメンコ 公演の見どころ TEXTS:東敬子(フラメンコ・ジャーナリスト)】

SIROCO X JUAN DE JUAN「舞台フラメンコ〜私の地アンダルシア」に寄せて、スペイン・マドリッド在住の
フラメンコ・ジャーナリスト東敬子さんに公演の見どころを書いていただきました。

 アフリカの大地から砂塵を撒き散らし、スペインへと吹き付ける熱風シロコ。そう名乗る一人の日本人ダンサーが今、フラメンコの魂を世界へと届けようとしている。

 2017年にスペイン・ロンダ県で行われた第23回「アニージャ・ラ・ヒターナ」コンクールで日本人男性として初めて優勝し、今や押しも押されぬ日本フラメンコ界を牽引する若手スターとなった彼が今回提唱するのは、友人でもある、巨匠アントニオ・カナーレスの舞踊団で第一舞踊手として長く活躍したスターダンサー、ファン・デ・ファンとの白熱の一騎打ちだ。

 フラメンコは、ユネスコの世界無形文化遺産にも指定されるスペインの伝統芸能だが、しかしなぜ、それを日本人が演じる、演じたいと思うのか。国際的なバレエなどとは違い、郷土色が色濃く残るフラメンコでは、スペインの人々の生き様、人となりを表現出来るかどうかが肝。全く違う文化を持つ日本人が表現するには、ハードルがかなり高い。しかし、それでも演じたいと思う魅力が、そこにはある。そしてそれは全世界の人々が共感出来る、今を力の限り生きようという情熱に他ならない。

  その熱い想いとともに、シロコは今回、公演『私の地アンダルシア』でフラメンコの全てをステージに凝縮させる。シロコがフラメンコの伝統的なスタイルで想いを伝えるのに対し、ファンは現代的なアプローチで迫る。その対比が面白い。また、ライブ演奏による臨場感と共に、両者の即興を交えた、超高級の舞踊技術が繰り出す足さばきも見逃せない。極上のエンターテイメント、感動に震えること間違いなしだ。

 音楽陣には、歌い手ホセ・バレンシア、シモン・ロマン、マラ・レイ、ギタリストにエル・ペルラ、パーカッションにホセ・カラスコを招き、日本からはギタリスト徳永健太郎、マルチミュージシャンの森川拓哉が加わる豪華版。加えて、日本フラメンコ協会が選ぶ「奨励賞」に輝く5人の女性ダンサー(影山奈緒子、奥野裕貴子、松彩果、平山奈穂、大塚歩) も群舞で華やかに彩りを添える。

  7年間の交流を経てファンと固い友情で結ばれたシロコだが、今回は、大きな成長を遂げた一人のフラメンコダンサーとして、真正面から対峙する覚悟を決めた。シロコが、日本フラメンコ界のスターから「レジェンド」へと変われるか否かは、この友情に満ちた、しかし熾烈なバトルにかかっている。

 

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